都市問題を考える「全国都市問題会議」

都市の抱える問題や行政課題の解決に向け、全国の市長、特別区長、議員をはじめ、自治体関係者と学者、研究者が一堂に会し、都市問題を考える「全国都市問題会議」。
第88回目は山形県山形市で開催。名簿上は1921名が参加。
板橋区長と政策経営部長もご参加でした。
テーマは「広域連携による都市圏づくり ~活力ある多極型社会へ向けて~」。
板橋区の周辺自治体との広域連携の可能性について強く考えされられました。
また、秘書時代、ある大学の教授の方から「議員はクリエイティブではないから嫌い」と言われたことがあり、そのことを念頭にご講演を拝聴。
議員にできることは、クリエイティブな方々を後押しすることなのだろうかと考えさせられました。
全国都市問題会議は毎回勉強になります。
写真の一枚目は参加した自民党の議員。
二枚目は、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(キューイチ)の前で。昭和2年に山形県内初の鉄筋コンクリート造建物として建設された山形市立第一小学校旧校舎をリノベーションし、創造都市やまがたの拠点施設として整備した施設です。
「クリエイティブと産業をくらしでつなぐ。」をコンセプトに、まちの芸術文化と魅力、産業経済とをつなぐプラットフォームとして、施設内には、飲食店や物販店、文化財展示室、アートギャラリー、オフィスやレンタルスペースがあります。
「Q1」なだけあり、Qの文字のモニュメントの横に一人立てば「Q1」となるということを念頭にしてあえてQ一文字が設置されているのだろうと思います(たぶん)。

以下、会議の概要です。

【基調講演】
(株)日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷浩介氏。
多くの人が信じている「選択と集中」や「賢い縮小」といった常識は、事実に基づかない「聞きかじり」に過ぎず、政策決定において極めて危険であると警鐘を鳴らした。
特に人口動態については、日本の問題は高齢化ではなく、過去50年で出生数が6割以上減少した深刻な「少子化」であると断言。「高齢化率」という指標は実態を誤認させるとし、本当に注目すべきは年金・医療・介護負担に直結する「75歳以上人口」の増減であると指摘した。その上で、日本の75歳以上人口の増加は既にピークを過ぎており、今後急増するのは東京などの大都市圏であると予測。
結論として、地震リスクも高く、子育てにも非効率な東京への一極集中は持続不可能であると批判。世界標準で見れば日本の地方は十分に人口密度が高く、豊かな食文化や技術力を有しており、ドイツやスイスのような「賢い分散」こそが目指すべき姿だと提言。
首長や行政関係者は、思い込みを捨てて自ら公的データを分析し、事実に基づいた政策を立案すべきとのこと。

【主報告】
山形市長の佐藤孝弘氏。
日本の少子化と人口減少を背景に、日本全体の持続可能性への危機感を示し、東京一極集中の歴史的背景・現在の実態・リスクを踏まえた「多極分散国家」への転換の必要性を論じた。
第1フェーズとしての地方創生政策の経緯・成果・限界を整理し、第2フェーズとして人口減少下でも持続可能なまちづくりの具体策(施設統合・広域連携、交通インフラ整備、デジタル活用、役割分担の見直し、交流・関係人口の拡大)を提示。
山形市の連携中枢都市圏による広域炊飯施設や「山形クリエイティブシティセンターQ1」の事例を紹介したうえで、第3フェーズでは、止まらない東京一極集中を前提に、日本全体の構造を「一極化か多極化か」という視点で再設計する大胆な国土ビジョンを問題提起。上場企業本店の過半が東京にある現状や、東京都産業連関表に見られる「本社輸出」の特異性、地方の人口減少・市場縮小が東京自身の供給力・市場を損なう相互依存の構造、災害リスク・全国インフラの非効率・生活コスト高騰と居住環境悪化など生活者目線の課題を示し、国主導で大企業本社機能の一部を地方へ分散させる大胆な政策、地元企業の育成、連携中枢都市圏・公共交通・施設更新の強化、役割分担の見直しを提案。
歴史的文脈(江戸期の分散、明治以降の中央集権、戦後政策による集中)と国際比較(米国の多拠点、欧州の分散)を踏まえ、分断ではなく日本全体の持続可能性の問題として再定義し、東京集中の加速度は止まっていないと結論づけた。

【一般報告】
①宮城学院女子大学・宮城大学名誉教授の宮原育子氏。
仙台市と山形市を中心とした広域連携の取り組みである「仙山(せんざん)圏」について、その形成経緯、具体的な活動、そして背景にある地理的・歴史的・社会的要因を解説。
奥羽山脈を挟んだ両県の気候の違いが生活に与える影響や、交通網の整備を機に始まった両地域の連携が、東日本大震災時の相互支援を経て、どのように発展してきたかを紹介。
近代化の中で一時的に衰退した歴史的な「横軸」の交流を再評価し、ストロー現象などの課題を乗り越え、両県の個性を活かした連携を深めることで、次世代に向けた東北全体の新たな発展軸を築く重要性を論じた。

②宮崎県都城(みやこのじょう)市長の池田宜永氏。
広域連携の前提として、各自治体が「自力」をつけることの重要性を強調し、都城市が取り組む県境を越えた「定住自立圏」構想を紹介。
市長就任以来14年間一貫して実践してきた「自治体経営」の理念を詳述。「人・モノ・カネ」という経営資源の中で特に「人」(職員)の人間力向上を最重要視し、その核として「都城フィロソフィー」の導入と運用について説明。
人口減少に「抗う」姿勢を明確にし、「三つの完全無料化」などの子育て支援策を柱とする人口戦略とその成果を報告。
都城志布志道路の全線開通がもたらした防災・経済・医療面での効果や、東側バイパス事業の再開、南海トラフ地震に備えた「バックアップシティ」構想、東九州新幹線の展望など、具体的な広域連携戦略を共有し、南九州のリーディングシティとしての役割を担う決意を表明した。

③東北芸術工科大学デザイン工学部教授の馬場正尊氏。
現代の地方都市において従来のトップダウン型・ピラミッド型の都市計画が機能不全に陥る中、「都市編集」や「エリアリノベーション」といった民間主導・多極分散型の手法を核に、小規模なゲリラ的実践から行政を巻き込んだ公民連携、さらに明文化された都市政策へと段階的に発展させるプロセスを提示。
山形市を主舞台に、空き家・空き物件の活用、公共空間の再生、学生主導プロジェクト、シネマ通り活性化、テナント育成などの点的介入が面的展開へと波及し、歩行者増、雇用創出、地価上昇、移住促進などの好循環を生む事例を紹介。
巨大な再開発に依存せず、小さな歯車を多数回す分散型の都市システムに合わせ、行政がクリエイティブに政策を明文化し、民間の実践と補完関係で進めることの重要性を強調。
中心市街地の「歩いて幸せになる街」というグランドデザインのもと、山形銀行本店の公共空間化、七日町商店街再開発、市民会館建設、旧百貨店跡の再開発など大規模投資と、旧第一小学校を活用した「Q1プロジェクト」による創造都市戦略が連動し、都市政策が産業・教育政策へと拡張していく具体像が語られた。

【パネルディスカッション】
コーディネーターである東京都立大学大学院法学政治学研究科教授の伊藤正次氏が、従来の自治体枠組みの限界と広域連携の必要性を提示。
パネリストからは、
・山形大学人文社会科学部教授の山田浩久氏が、中心集約型モデルに代わる「共立共存(分断的協調)」の原理を提唱。
・(一社)雪国観光圏代表理事の井口智裕氏が民間主導で「雪国文化」というストーリーを核にした観光圏形成の具体例を発表。
・三重県いなべ市長の日沖靖氏がいなべ市での定住自立圏や民間人材活用(地域活性化企業人)の事例を発表。
・岡山県真庭市長の太田昇氏が真庭市でのバイオマス活用や多極分散型の国づくりへの提言を発表。
ディスカッションでは、連携モデルの実態、成功の要点(大義、相互メリット)、行政の役割などが議論された。
ありがとうございました。